東京農村ブログ

武蔵小金井駅前に広がる畑の正体とは?!【東京農サロン・ゼミ開催レポート】

2023年3月20日(月)に東京農村にて東京農サロン・ゼミを開催しました。

今回は大久保農園園主の大久保勝盛さんをお招きして、「都市農地を市民に開く!わくわく都民農園小金井ができるまで」と題して、お話を伺いました。皆さんは「都民農園」をご存知ですか?貸し農園という言葉は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。今回はそんな都民農園についてレポートします!

—–

大久保さんは先述の通り大久保園の園主でありながら、JA東京むさし青壮年部の本部長も務めていらっしゃいます。植木職人のお父様から受け継いだ植木畑を収穫体験農園にリニューアルし、サツマイモやじゃがいもなどの収穫体験で年間2000人以上の園児を受け入れているそうです。


2022年3月には武蔵小金井駅近く(本当に近いです!)の3,000㎡の生産緑地を東京都に貸し、小金井市観光まちおこし協会による「わくわく都民農園小金井」を開設されました。わくわく農園は、東京都が都市農地の保全と超高齢社会に向けた高齢者の活躍と地域の多世代交流を進めることができる地域モデルの確立を目指して整備されました。敷地内には5種類もの農地があるのに加えて、防災機能や販売所も備えています。

メインとなるのはシニア農園で、ここでは都内在住のシニア層が栽培セミナーを受講することで野菜栽培技術を習得することができます。都市農業の縮小、高齢化の進行、地域の交流不足などが叫ばれる中で、土地貸借による農業体験を通して、農の学びと交流を生み出し、高齢でも元気に地域とつながることを可能にします。それ以外にも福祉農園、地域農園、こども農園など、目的に応じて様々な農地が用意されています。

農園開設当初は葉っぱや虫などに関して、ご近所からの苦情もあったようですが、地域住民の方との繋がりもできた現在では苦情はほぼ無くなっているようです。現在の課題は、都民農園利用者のその後のサポートに関するものです。都民農園では本来、そこで技術を習得したシニア層が、その後も農家を支援したり、土地を借りて農業を始めたり、地方に移住して農業を始めたりすることを想定しているようですが、小金井市ではそれらに関して支援制度が整備されていないので、今後取り組むべき課題と言えそうです。

以上、今回は「わくわく都民農園小金井」についてのお話を軸に、都民農園の難しさや可能性について理解を深めました。小金井市でも農地が減少している今なお大きな農地を持っている大久保さんが、貴重な土地で農業ができていることの利益を地域に還元すべく奮闘し、「保育園で収穫体験をした園児が大きくなって、『この場所でさつまいも掘り体験をしたんだ』と思い出してくれたら嬉しい」と語る姿が印象的でした。
https://koganei-kanko.jp/ (小金井市観光まちおこし協会HP)
https://koganei-kanko.jp/farm/introduction (わくわく都民農園小金井HP) 


ライター:一橋大学3年 岩崎友哉(株式会社エマリコくにたちインターン) 

東京のキノコ美味しい~!【農家と食べようin東京農村レポート】

2月25日土曜日、「農家と食べようin東京農村」シリーズの日野キノコ編が、「野菜と酒 Sprout」で開催されました。

「野菜と酒 Sprout」は、2月1日に東京農村に開業した新店です。
いろいろなキノコを育てている日野パイロットファームの遠藤善夫さんがキノコ栽培について語りました。
参加者はワインを飲みながら、美味しいキノコ料理に舌鼓。

奥が遠藤さん、手前でキノコを調理するのがSproutの大越昭彦シェフです。

ライヴ感満点です。
キノコは、なめこ、しいたけ、ひらたけ、そして珍しいところでタモギタケが用意されました。

しいたけは揚げたての串揚げで!
北海道や青森が原産だというタモギタケ。香りが素晴らしい。
なめこ。スーパーで売られているのとは、ぜんぜん見た目が違います。見た目のとおり、味が濃いです。

熱心に遠藤さんの話に耳を傾ける参加者のみなさん。
ひらたけは、シンプルなローストで。店じゅうに香ばしい香りが!

参加者からは、自宅でしいたけを育てる場合のコツなどの質問も出ていました。

「農家と食べようin東京農村」シリーズ、今後もお楽しみに!

直売所に胸きゅん!?庭先直売について語る!(『東京農サロン・ゼミ』開催レポート)

2023年2月15日(水)に今年初めての東京農サロン・ゼミを開催しました。
今回のテーマは「庭先販売の課題とポテンシャル!」と題して、立川市の豊泉農園の豊泉享平さんと農業デザイナーの南部良太さんを招いて、参加者20名ほどでお話を伺いました。

まずは豊泉農園の豊泉さんからプレゼンテーションが行われました。豊泉農園では(普段あまり見かけることのない?)有人の直売所を運営されています。月・水・金・土の10時から15時まで開店しており、有人直売所で販売額が全売上のなんと7割を占めるそうです。

有人販売のメリットは3つで、1つ目は、フードロス削減につながること。有人販売であればスーパーに出せない野菜も、口頭で「どこが悪いか」「なぜそれが生まれたか」「食べ方」を説明することで破棄することなく販売することができます(ただし、B級品の販売をやりすぎるとA級品が売れなくなってしまうという懸念も)。
2つ目は、お客様に合わせた営業ができること。お客様の年齢や移動手段、趣味、職業などを把握し、そこからお客様にとって「最適な料理法」を伝えることができます。
例えば、お客様の年齢層が若ければ簡単な調理法をおすすめし、チャイルドチェアがついた自転車で来店した人には家族向けの野菜や調理法をおすすめするといった対応が可能となります。
3つ目は、お客様とコミュニケーションが取れること。単に野菜を売り込むだけでなく、野菜を食べた感想や調理法も聞くことで、来年の作付けの参考にしたり、野菜を加工した新製品の開発につなげたりすることができます。

また、有人販売だからこそ売れるものとして、①鮮度が良いもの②スーパーでは買えないもの③手土産で渡せるものが挙げられるそうです。②の具体例としては、ハヤトウリやウド、蕗のとう、葉とうがらしがあり、③の具体例としては、イチゴやオリジナルの加工品があります。

ただ、直売所に全く課題が無いかというとそうではなく、現時点での課題は、直売所に入りづらい雰囲気があることと、情報発信に改善の余地があることだそうです。改善策として、カラフルなPOPの作成や、SNS発信、ライブカメラで店内の様子を見られるようにすること、Googleマップへの登録などを今後さらに強化していくようです。

続いて農業デザイナーの南部さんからのプレゼンテーションが行われました。
大きく「直売所の特徴」「胸キュンポイント」「今後の可能性」の3点についてお話しいただきました。特徴に関して、直売所は大きく6つのタイプに類型化でき、①東家タイプ②プレハブタイプ③屋内タイプ④棚タイプ⑤ビニールハウスタイプ(南部さんのお気に入り)⑥自動販売機タイプに分かれるそうです(南部さん調べ)。ただ、無人の直売所だと防犯面で問題があり、最近は自動販売機タイプも増えてきているようです。 

続いて直売所の胸キュンポイントは主に3つあり、1点目が「農家フォント」と呼ばれる、商品名や値段を農家が直筆で書いたフォントです。白背景に黒文字があったり、黄色背景に黒文字があったり、はたまた黒板に書かれていたりと、農家によってさまざまなようです。2点目は「看板デザイン」で、木彫りで自作されたものもあれば、イラストでポップに描かれたものもあり、看板一つとっても胸キュンポイントが詰まっています。
3点目は「謎の売り場」で、直売所によっては、お金の投入口が真実の口だったり、フェアトレードのコーヒー豆が売られていたりするようです。また最近では、比較的古そうな直売所でもPayPayを導入している店舗があり、そのギャップにキュンとするようです。

直売所の可能性については、「直売所×◯◯」で新たなファンを獲得できるのではないかとのこと。
例えば、「直売所×飲み屋」で、野菜をつまみにお酒を飲むという形態や、「直売所×本屋」や「直売所×屋台」といった形態など、他業界と直売所をかけ合わせることで、今までにない直売所が生まれるのではないかというアツい想いが語られました。直売所が人とのつながりを生み、地産地消を促し、地域の課題解決の場としても機能する未来はそう遠くないのかもしれません。

 以上、今回は庭先販売(直売所)をテーマにして、実践例から今後の可能性まで、非常に多岐にわたるお話を伺いました。お二人のプレゼンテーションの後には、懇親会が行われ、参加者同士で盛り上がりました。

今後も庭先販売、そして東京農業から目が離せません!

 
一橋大学経済学部3年 岩崎友哉

【新春・東京農サロン】「野菜と酒Sprout」が東京農村でNEW OPEN!

 2023年1月20日(金)の夜、東京農村では東京農村・新店OPEN記念新年会が開催されました。当日は東京野菜をふんだんに使用したお料理が振る舞われたり、大越昭彦シェフによる熱い想いのこもったプレゼンテーションが繰り広げられたりして、都市農業を共通項に集まった40名ほどの参加者で大いに盛り上がりました。今回はそんな新年会の様子をレポートします。

 午後6時から開催された新年会には、農家はもちろん、官僚やジャーナリスト、大学教授、デザイナーなど非常に多様なバックグランドを持つ方々が集まりました。大越シェフが東京野菜を使った料理を振る舞い、参加者は「野菜と酒」に舌鼓を打ちました。

 続いて大越シェフによるプレゼンテーションが始まりました。蕎麦屋に生まれた大越シェフの生い立ちから、イタリアでの修行話、帰国後の業態開発やベーカリープロデュースなど、大越シェフの人生をぎゅっと凝縮したプレゼンテーションでした(イタリアでの色恋沙汰は大越シェフに直接聞いてみてくださいね笑)。


 大越シェフのこだわりは「お客様の胃袋に入る寸前まで、お野菜の魅力や可能性を、お客様の目の前でお伝えすること」。「オフライン店舗の強みを活かして、料理や消費者を絡めて都市農業を発信していく装置として、お店が機能してくれたら」と大越シェフは語ります。そんな大越シェフは自らをシェフ(料理人)かつファーマー(農家)の「シェファーマー」と自称しています。自らも畑に通い、料理をすることで、「農家さんとの距離ゼロ」のお店を目指しているようです。



 そんな大越シェフが作るお店の名前は「Sprout」。この場所から、野菜やお酒と共に、「新芽」が芽生えてほしい。そんな想いを込めて、この名前がつけられました。「全てはお客様と生産者の笑顔のために」を理念に掲げ、作業効率よりもお客様やスタッフを想うハートフルな気持ちを忘れずに、東京野菜を提供し続けます。グランドオープンは2月1日(水)。皆様もぜひ、大越シェフによる東京野菜料理を堪能してください。

 現在「野菜と酒 Sprout」へのクラウドファンディングも募集中です。以下のURLよりご支援よろしくお願いします。リターンはお食事券となっています!(2月14日まで)

https://camp-fire.jp/projects/view/638400

 
岩崎友哉(一橋大学経済学部3年)

未来へ多摩市の農をつなぐ!有機の力で農業公園?(『東京農サロン・ネオ』開催レポート)

奇数回にお届けしている東京農サロン・ネオ。今回は「多摩丘陵、ニュータウンのなかで残る有機農業~落ち葉堆肥、有機農業公園、多摩市農業のこれから~」というテーマのもと、多摩市の農家・萩原重治さん(冒頭写真)、多摩市役所の農業委員会事務局農地係長の沖迫達矢さんをお招きして、落ち葉堆肥で有機農業を行う理由や多摩市農業公園の計画と展望についてのお話をうかがった後、未来ある農業について熱い議論が交わされました。

ニュータウン開発でかつての里山から変貌を遂げた多摩市。
丘陵地が多く農地を維持するのが難しいため、農地面積は38ha、農家数は70戸と近隣の都市と比べても非常に少なく、さらに年々農地面積、農家数ともに減少しています。そこで多摩市の農地を守るため、平成31年に市民の農への関心を高めるための「多摩都市農業振興プラン」を策定したり、令和4年には「多摩里山プロジェクト」を開始するなど、未来へ農をつなげる取り組みを行っています。


 
「多摩里山農業公園プロジェクト」とは?多摩市農業のこれから

多摩市連光寺辺りの湿地には珍しい貝やヘイケボタルなど、希少な生物が生息しています。
これらの希少な生物を守るため、平成26年東京都より約32,900㎡が里山保全地域として指定されました。
さらに、集水域の保全も必要であるとして、令和2年に約16,400㎡が追加で指定されました。
多摩市はこの拡張された地域のうち約3,600㎡を買い取り、「周辺環境にも配慮しながら、市民が農作業の体験や体験を通じた交流・ふれあいなどを行うことができる、今までに見たことのない農業公園を作りたい」という想いの元で専門家と検討を重ね、令和4年に実験・体験をしながら農業公園をつくっていく「里山農業公園プロジェクト」が開始しました。

ジャガイモの栽培から始まり、多品目な野菜を栽培。
今年は予算の関係もあって、市役所の職員(農作業は未経験者多数!)も自ら耕作したということです。

現在はニンジン、ホウレンソウを試験栽培中。今後はさらに試験圃場面積を増やし、農作業だけでなく、ワークショップなども開催し、地域交流の場として展開していくそうです。

(多摩市連光寺の高台にある農業公園の用地)

有機栽培を行う理由とは?落ち葉堆肥の力

多摩里山農業公園の開園サポートや体験型農園の運営も行っている萩原重治さんは、何といっても落ち葉を中心とした有機栽培が特徴です。
有機栽培を始めたきっかけは、5、6年間ほど、有機肥料を使った野菜と化学肥料を使った野菜を並行的に育て、食べ比べたところ、有機栽培の方が絶対に美味しいという結論に至り有機栽培を始めたそうです。

(懇親会の料理も、萩原さんが育てた新鮮野菜で。大好評!)

主に有機の肥料は多摩市永山団地の落ち葉が使用されています。なかでもけやきやさくらを中心とした落ち葉が最もおいしい野菜が育つと長年の研究から気づいたそう。
多摩ニュータウンの団地と地元農業にこんな美味しい関係があるなんて。
毎年70kgほどの落ち葉が重治さんの畑に運ばれ、完熟状態になるまで約1年発酵させたら肥料として撒いているそうです。

さらに、重治さんは水を与えるのも最低限にしています。「化学肥料で作った野菜を肥満児とすれば、有機肥料で育った野菜はアスリート。野菜は自ら肥料・水を求めて根を生やしていくのが本来の自然な姿。最小限の肥料と水を与えることで、丈夫でおいしい野菜が育つ」と重治さんは語っておられました。

 「農を未来へ」つなげていくためには、野菜のおいしさを追求し農業の魅力を発信していくことと、市民を巻き込んだ農づくりが大切だということを学びました。新たな農業公園の未来が楽しみです。


(作成者)エマリコくにたちインターン 福田菜子

 

前へ12345...11次へ