東京農村ブログ

2024年1月 東京農サロンNEO『東久留米市発!「やさいバス」がやってきた』

奇数月の第3水曜日、開催される東京農サロンNEO。1/24(水)は『東久留米市発!「やさいバス」がやってきた』というテーマのもと、「野崎書林」の野崎林太郎さんと、「やさいバス」の江川洋平さんにお話をお聞きしました。

●野崎書林の「書店併設型の野菜マルシェ」

「書店+野菜マルシェ」という興味深い取り組みをしている野崎書林代表の野崎林太郎さん。こうした取り組みを始めた理由は、単に書店事業としての差別化戦略にとどまらず、地域を支え・盛り上げていくという志によるものでした。

「書店も農業も、大きく利益の出る事業ではないが、環境・教育・社会の豊かさ・持続性にとって「責任」と「可能性」のある事業である。だからこそ【書店+農業】を組み合わせて地域を盛り上げていこうとする想いのある仲間が集まり活動する場を作りたい!」

私も偶然1月に訪問しましたが、木造りでオシャレなスペースに市内で育てられた野菜や果実・野菜を使ったジャム
(東京JAM:https://tokyo-jam.com/
市内名産の「柳久保小麦」のパンケーキミックスなど、自慢の名産品が所狭しと並べられておりすごく感銘を受けたのを思い出しました。

●農業界の流通を変える「やさいバス」

そんな野崎さんも参画している清瀬・東久留米・小平などを駆けめぐっている「やさいバス」。「やさいバス」について私自身恥ずかしながら今回初めて聞いたのですが、「ECを通じた生産者と消費者の売買」を支える新たな「地域共同配送システム」であり、コストが削減できるだけでなく、「生産者」と「消費者」を大きく近づける可能性をもった画期的な取り組みであることが理解できました。(実は2017年から静岡県で始まっており、全国8か所で広がっているようです。)東京担当の江川さんから現在立ち上げのため様々なチャレンジの話をお聞きしその魅力、難しさについてお話しいただきました

 

私自身、現在、直売所・流通にかかわる立場で「地元の東京農業の活性化」をめざし働いているので、多くの「共感ポイント」と「ヒント」がありすごく自分事として聞き入ってしまいました。そしてボトルネックとして「消費者がどうしても地元野菜・商品が欲しくなるような価値・理由づくり」に今まで以上に力をいれていくことが大切だと改めて思いました。

野崎さん、江川さんありがとうございました!

 
(エマリコくにたち社員 東京農サロンNEOスタッフ 本多 航)

2023年のイチオシの本は?【東京農サロン・ゼミ開催レポート】

年の瀬の12月20日水曜日。
今回は、”スペシャル忘年会”ということで、普段と趣向を変えた東京農サロン・ゼミが行われました。

今年一番面白かったコンテンツ(本や映画)を、参加者全員からひとつずつ発表していただきました。

表紙の帯を書いている気持ちで推薦文を書いてもらい、壁にずらりと貼りました。食関係や農関係、経営関係の、とっても興味深いコンテンツばかり。

質問もたくさん飛び交って、参加者が食や農にきわめて強い関心を持っていることが分かると同時に、あらためて多様な才能が集まるイベントであることを再認識いたしました。

そして、もっとも多くの参加者が「読んでみたい!」と言った書籍『発酵食品と戦争』(小泉武夫著、中公新書)を発表されたKさんには、多摩市農産加工組合(農業者有志でつくる加工所)の味噌「原峰のかおり」が賞品としてプレゼントされました。

以下に、当日紹介された、本と映画のリストを掲載します。ぜひご覧になってみてください。

ーーー以下、全17作品!(順不同)ーーー

1 日本再生のレシピ / 奥田政行 https://amzn.asia/d/dpKTMn9
2 北欧でみつけたサステイナブルな暮らし方 / 井出留美 https://amzn.asia/d/c6Vx9Nx
3 今日、誰のために生きる?ーアフリカの小さな村が教えてくれた幸せがずっと続く30の物語 / ひすいこたろう https://amzn.asia/d/f8kGfRg
4 「いただきます」の人類史 : ヒトの誕生から生活習慣病の現代まで / 蒼井倫子 https://amzn.asia/d/61jWytW
5 日本のコメ問題ー5つの転換点と迫りくる最大の危機 / 小川真如 https://amzn.asia/d/9aUzlGn
6 まちを変える都市型農園 / 新保 奈穂美 https://amzn.asia/d/g9WGGy5
7 経営リーダーのための社会システム論 / 宮台 真司、野田 智義 https://amzn.asia/d/gORWgxb
8 土とともに美術にみる<農>の世界 / 茨城県近代美術館  ※今では手に入らなそう
https://www.modernart.museum.ibk.ed.jp/viewer/info.html?id=141
9 給食の歴史 / 藤原 辰史 https://amzn.asia/d/f0OUZqa
10 エシカルフード / 山本 謙治 https://amzn.asia/d/fYX2rYc
11 スパイス完全ガイド / 稲田俊輔 https://amzn.asia/d/i0Wuxti
12 めねぎのうえんのガ・ガ・ガーン! / 多屋光孫 https://amzn.asia/d/0tsoOqv
13 くろねこ軒の本当に美味しいBASIC とっておきのSPECIAL / 池谷 信乃 https://amzn.asia/d/aInRvnK
14 一流の人間力 / 井上 裕之 https://amzn.asia/d/358EvVI
15 発酵食品と戦争 / 小泉 武夫 https://amzn.asia/d/i5Qe6El
16 都市の農を考えるー農的活動の新展開と市民緑農地の展開(未出版) 2月頃?
17 【映画】さよなら ほやマン
https://longride.jp/sayonarahoyaman/

みどりあふれるメトロポリス!農地が担う役割は? 【東京農サロン・ゼミ開催レポート】

偶数月の第3水曜日、夜な夜な開催される東京農サロン・ゼミ。
10/18(水)は『みどりあふれるメトロポリス!農地が担う役割は?~東京都の施策を語ろう~』というテーマのもと、都庁の都市整備局都市づくり政策部緑地景観課長の菅原淳子さんを講師としてお招きし、独自政策の成果や見通しについて伺いながら、東京都のみどりと農地の関係についてお話ししていただきました。

東京都の取り組み~農の風景育成地区とは~

東京都の「みどりの取組」では、大方針のひとつに、【将来にわたり農地を引き継ぐ】ことが掲げられています。
東京都には公園整備、開発で創出してきた緑、人々の生活に寄り添い受け継がれてきた里山、屋敷林などの様々な緑が身近にありますが、そのなかでも農地はまちがいなく重要なファクターです。国の動きとしては、生産緑地などの法制度で都市農地を守ろうとする動きもありますが、東京都にも独自政策があります。たとえば「農の風景育成地区」の指定が代表的で、一定の成果を残しています。

「農の風景育成地区」とは、減少しつつある農地をオープンスペースとして保全し、農のある風景を将来に引き継ぐ制度のことです。東京の農地は、食料生産だけでなく、潤いのある風景の形成や、災害時の避難空間など、多面的な役割を担っています。この制度では、農地や屋敷林などが比較的まとまって残る地区を指定し、散在する農地を一体の都市計画公園等として計画決定するなど都市計画制度を積極的に活用しています。地域のまちづくりと連携しながら農のある風景を保全、育成しているのです。

この取り組みは、後継者問題や年齢・身体上の理由などにより営農継続が厳しい農家にとっても非常に大切な政策であり、今後より活用されていくべきだと感じました。菅原さんは「農地の大小関係なく、今ある農地はすべて残していきたい」と語っておられました。ただ、農の風景育成地区指定後に農地を維持・管理していくためには、地主・近隣住民・農地を管理する人の協力が必要であり、管理・維持費がかかることも課題になることがあり、一筋縄ではなかなかいかないそうなんです。試行錯誤しながらも、なくなってしまう前に少しでも多くの農地を守っていきたいとお話ししていました。

繋ぐ役割~みどりを考えるきっかけづくり~

「今後、貴重な都市農地を保全していくためには様々な人々の理解が必要であり『農と都民を繋げること』が私たちの役割です。」と菅原さんは熱く語っておられました。

農や緑があることを当たり前だと思っている人や興味がない人に、いかに農の重要性を感じてもらえるか。都民に実際に農に触れてもらい、農が身近にあることを意識してもらう。今はまだ「街づくりとしての農地」と捉えている人は少なく、農家は農地を畑としか捉えておらず、街中の人は「畑があるな」くらいにしか感じていない。農家も都民も都市農地の希少性を他人事のように考えている人が多いのが現状です。今後、東京都として都民に農地や緑に触れてもらうきっかけをつくり、農と都民の懸け橋になる政策を行っていくそうです。 

今回のお話しのなかで「守れる農地は大小関係なくすべて守りたい」というお言葉がとても印象に残っています
減少しつつある都市農地を守るためには東京都や農家だけでなく、私たち都民も農を理解し協力する姿勢が大切です。あらめて私自身も他人事のように捉えず、緑ある風景を守っていきたいと感じました。これから先、東京都がみどり溢れる街になる未来も近いのではないでしょうか!

(エマリコくにたちインターン生 福田菜子)

あきる野市の多彩な特産品、そして農業の組織づくり【東京農サロン・ネオ開催レポート】

今回の農サロンは『あきる野市の農業の特徴を知ろう!』と題しまして、東京あきる野市の農業者を代表して、秋川地区・笹本善之さんと五日市地区・栗原剛さんにお越しいただきました。あきる野市の農業の特徴やお二人の営農について伺っていきたいと思います。

あきる野市の人口はおよそ8万人。都心から40~50km圏内に位置し、東京サマーランドが観光名所の山の多い地域です。農業者の高齢化が進んでいるそうです。

特産品は旧五日市地区ののらぼう菜と旧秋川地区のスイートコーン。のらぼう菜は江戸時代初期に「じゃばな」という種が地域の農民に配布され、栽培されたのが始まりとされています。あきる野市では、アブラナ科の特徴として交配しやすいのらぼう菜を、品質の良いものだけを隔離して栽培することで地域の特産品として根付かせました。スイートコーンは地域的に酪農が盛んだった歴史が背景にあり、現在ではスイートコーン部会が組織され、地元の直売所では当日の朝採りしたものだけを販売しています。

地域農業者の高齢化が進んでいる中、五日市地区には山の多い地形を活かし、ヤギの放牧で新規就農した養沢ヤギ牧場・堀周さんという方がいます。今回、堀さんのヤギチーズを差し入れでいただき、会場のご参加者で試食しました!

続いて五日市地区・栗原さん、秋川地区・笹本さんにご自身の営農について伺いました。栗原さんは五日市地区で野菜を多品目栽培しています。お父さんが五日市地区で農業を営み、栗原さんは公務員として働いましたが、お父さんのご病気をきっかけに、地元に戻りました。最初はお父さんの農業を手伝うつもりでしたが、そのままお父さんの体調は悪化し会えない人に…師を失い、一から独学で農業を学び現在に至るそうです。

笹本さんは秋川地区で野菜を中量中品目栽培し、農業体験も行っています。農業体験では生産者として農業という仕事の体験を提供することで、他との差別化をしています。そんな体験事業の経験を活かして、現在新しい事業を立ち上げ中だとか。

地域の農業やお二人の営農について伺う中で、司会の小野さんからの質問も加わり、「農業の人手不足は根本的に人を雇うための資金不足が背景にあるのではないか」「都内夫婦で新規就農はまず食べていけない…!」といった農業の現状の課題についても話が盛り上がりました。

その後の質問タイムでは営農に関する質問が多く挙がりました。中でも印象的だったのは、従業員を雇った場合の組織作りについて。どのように作業の標準化を行っているのか質問がありました。それについて笹本さんからは「農業は技術が必要なところは多くは無いのでは…監督する人が作業の要所を把握できていれば、作業は反復。作業の分解と監督できる人が重要」だというご返答がありました。自然を相手にしているため感覚になりがちですが、従業員には言語化し伝えていくことが必要ですね。

今回はあきる野市の地域農業から、農業界全体の担い手不足や経営について話が広がり、何かと考えさせられる会となりました!

記録:菱山優佳里(エマリコくにたちインターン)

立川は東京農業をけん引する!【東京農サロン・ネオ開催レポート】

2023年7月19日(水)に東京農村にて『多様性の立川農業「立川印」!』と題しまして、東京農業サロン・ネオを開催いたしました!

立川農業の特徴と2022年にできた「立川印」について知りたいと思います。

 

トライアスロン農家・中里さんのお話
今回、ご登壇頂いたのは、なかざと農園・中里邦彦さん、高橋園・高橋尚寛さんです。長年、立川市内で農業に従事し、新規就農希望者を積極的に受け入れてきたお二人から、立川農業の特徴や就農希望者へのアドバイスなどを伺いました!司会進行は農天気・小野淳さんです。

まずは、中里さんより立川農業となかざと農園についてお話いただきました。立川市内は市街化調整区域であり、野菜、果樹、畜産、花卉、植木などバラエティの富んだ農業が行われています。

また、2022年には立川農業振興会議が主体となり、生産者と共に立川農業全体をブランド化した「立川印」を作成しました!立川農業を見て、感じて、味わって欲しいという想いを込めて、ブランディングを行っているそうです。

続いて多品目の野菜を生産する、なかざと農園についてです。園主の中里さんは、立川市で代々農業を営む家の元に生まれました。大学を卒業後、多摩信用金庫に就職し、取引先である個人・法人のキャッシュ・フローの作成や事業計画書の作成、集客など、事業改善のお手伝いをされていたそうです。そのときの経験から農業を見た際、情報発信を行っていないことや、どんぶり勘定の事業体が多いことが問題点として挙げられるのではないか…と思うようになったとのことです。

そして、代々受け継いできた農地を途絶えさせてはいけないという思いから、39歳のときに多摩信用金庫を退職。東京都農林振興センターにて果樹を専攻して農業の基本を学び、自家継承して現在にいたります。なかざと農園さんでは野菜を多品目手掛け、小売店への出荷や対面販売、農業体験を行っています。

収納当初に感じていた農家自身の情報発信という課題について、中里さんは自身の農業での取り組みや思いをホームページの活用という形で発信しています。中里さんいわく、情報は自ら発信していくことで周りからも情報が集まってくるのだとか。今までなかった発想に繋がることもあるそうです。

中里さんは対面販売も行っています。お客さんの顔を見て直接販売することで地元のリピーターになるお客さんが得られることと、なによりお客さんの喜ぶ姿が見られることが対面販売の良さです。ただし、販売まですべて行うには手間も増えてしまうため、信頼できる仲卸さんに任せて販売することも選択肢としてあるといいですね。

そんな中里さんの新規就農希望者へのアドバイスは筋トレをすること!農業は強い精神が必要であり、精神は肉体を鍛えることで強くなれるのだとか。中里さんは現在、トライアスロンに挑戦しているそうです!

法人化!その社名は……!

続いて高橋さんよりご自身の経験や高橋農園についてお話を伺いました。

高橋農園さんの最大の特徴は立川で果樹を多品目栽培していること。また、作物は小売店や飲食店に出荷し、体験農園を行っています。先代は立川で植木の生産を行っていましたが、高橋さんは食べるものを作りたいという思いから果樹に切り替え、現在は12~14種類の果樹の栽培を始めました。

生産のこだわりは、着果管理や光合成を重視し、有機質肥料を用いて時間をかけて育てることで味に深みを出している、とのことです。

また、多品目を手掛けることで、常に提供できる作物があり、働き手の通年雇用を可能にしています。栽培品目は立川という立地を活かし、消費者に収穫してすぐのものを提供できるため、モモやイチジクなど鮮度が重要視される作物を選定しています。

多品目栽培するためには作業の効率化が不可欠。例えば、カキの樹高を低く育てることで脚立に乗る手間を省いています。カキの樹高が低いことで、農業体験に来た子供が収穫しやすくなり、効率化を考えた取り組みも思わぬ改善に繋がることもあるそうです。

さらに、高橋さんは新たに農地的確法人として「東京農業株式会社」を設立しました!

会社設立のキッカケは、従業員を安定して雇用していきたいという思いと、近年、新規就農希望者が増加していることが農業界にとってチャンスではないかと考えたからだそうです。会社名には東京の農業に貢献していきたいという想いが込められています。

中里さん、高橋さん、お二人とも多品目を手掛けていますが、その背景には通年雇用の創出や災害などによるリスク回避を考えてのことだとわかりました。また、立川という立地を活かした作物の選定や売り方をしていました。

お二人からお話を伺ったあと、質問タイムでは様々な質問があがりました。よく出てきた質問は新規就農者受け入れに関してのもの。中には、新規就農者を雇用すると将来のライバルになってしまうのではないか、という質問もありました。それに対して中里さんは、市場が広いため競合はしないと考えているそうです。高橋さんも、東京で果樹農家は少ないためライバルになりにくく、逆に仲間になり得るのではと考えているそうです。

 会場の様子は参加者同士のお知り合いが多かったようです。モモの切り方レクチャーが行われると、キレイに剥けたときには参加者から「おお~」という歓声が!終始、和気あいあいとした雰囲気でした。



今回のまとめとして。中里さん、高橋さんのお二人は、常にお客さんの声に耳を方向け、需要を感じながら自分の農業をどうするか考え、進んできたことに強みがあるのではないかと感じました。そして、中里さんの農業には体力と精神力が重要だという話が印象的でした。私も筋トレ始めます!

ご登壇頂いた、なかざと農園・中里さん、高橋果樹園・高橋さん、そして現地、オンラインにてご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

次回は8月16日(水)、学校給食の地産地消についてのゼミを行います!

お楽しみに~!



Written by 菱山優佳里(エマリコくにたち・インターン)

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