未来へ多摩市の農をつなぐ!有機の力で農業公園?(『東京農サロン・ネオ』開催レポート)
奇数回にお届けしている東京農サロン・ネオ。今回は「多摩丘陵、ニュータウンのなかで残る有機農業~落ち葉堆肥、有機農業公園、多摩市農業のこれから~」というテーマのもと、多摩市の農家・萩原重治さん(冒頭写真)、多摩市役所の農業委員会事務局農地係長の沖迫達矢さんをお招きして、落ち葉堆肥で有機農業を行う理由や多摩市農業公園の計画と展望についてのお話をうかがった後、未来ある農業について熱い議論が交わされました。
ニュータウン開発でかつての里山から変貌を遂げた多摩市。
丘陵地が多く農地を維持するのが難しいため、農地面積は38ha、農家数は70戸と近隣の都市と比べても非常に少なく、さらに年々農地面積、農家数ともに減少しています。そこで多摩市の農地を守るため、平成31年に市民の農への関心を高めるための「多摩都市農業振興プラン」を策定したり、令和4年には「多摩里山プロジェクト」を開始するなど、未来へ農をつなげる取り組みを行っています。
「多摩里山農業公園プロジェクト」とは?多摩市農業のこれから
多摩市連光寺辺りの湿地には珍しい貝やヘイケボタルなど、希少な生物が生息しています。
これらの希少な生物を守るため、平成26年東京都より約32,900㎡が里山保全地域として指定されました。
さらに、集水域の保全も必要であるとして、令和2年に約16,400㎡が追加で指定されました。
多摩市はこの拡張された地域のうち約3,600㎡を買い取り、「周辺環境にも配慮しながら、市民が農作業の体験や体験を通じた交流・ふれあいなどを行うことができる、今までに見たことのない農業公園を作りたい」という想いの元で専門家と検討を重ね、令和4年に実験・体験をしながら農業公園をつくっていく「里山農業公園プロジェクト」が開始しました。
ジャガイモの栽培から始まり、多品目な野菜を栽培。
今年は予算の関係もあって、市役所の職員(農作業は未経験者多数!)も自ら耕作したということです。
現在はニンジン、ホウレンソウを試験栽培中。今後はさらに試験圃場面積を増やし、農作業だけでなく、ワークショップなども開催し、地域交流の場として展開していくそうです。
(多摩市連光寺の高台にある農業公園の用地)
有機栽培を行う理由とは?落ち葉堆肥の力
多摩里山農業公園の開園サポートや体験型農園の運営も行っている萩原重治さんは、何といっても落ち葉を中心とした有機栽培が特徴です。
有機栽培を始めたきっかけは、5、6年間ほど、有機肥料を使った野菜と化学肥料を使った野菜を並行的に育て、食べ比べたところ、有機栽培の方が絶対に美味しいという結論に至り有機栽培を始めたそうです。
(懇親会の料理も、萩原さんが育てた新鮮野菜で。大好評!)
主に有機の肥料は多摩市永山団地の落ち葉が使用されています。なかでもけやきやさくらを中心とした落ち葉が最もおいしい野菜が育つと長年の研究から気づいたそう。
多摩ニュータウンの団地と地元農業にこんな美味しい関係があるなんて。
毎年70kgほどの落ち葉が重治さんの畑に運ばれ、完熟状態になるまで約1年発酵させたら肥料として撒いているそうです。
さらに、重治さんは水を与えるのも最低限にしています。「化学肥料で作った野菜を肥満児とすれば、有機肥料で育った野菜はアスリート。野菜は自ら肥料・水を求めて根を生やしていくのが本来の自然な姿。最小限の肥料と水を与えることで、丈夫でおいしい野菜が育つ」と重治さんは語っておられました。
「農を未来へ」つなげていくためには、野菜のおいしさを追求し農業の魅力を発信していくことと、市民を巻き込んだ農づくりが大切だということを学びました。新たな農業公園の未来が楽しみです。
(作成者)エマリコくにたちインターン 福田菜子