東京農村ブログ

神奈川×千葉×東京の生産者に都市農業について聞く!【東京農サロンSPECIAL開催レポート】

おかげさまで、東京農村は5周年!
2023年6月21日、5周年を記念した「東京農サロンSPECIAL」が開催されました!通算で55回目の開催です!

今回は「暮らしと、つながる農業。」をテーマに、苅部農園・苅部博之さん(神奈川県)、鵜殿シトラスファーム・鵜殿敏弘さん(千葉)、国分寺中村農園・中村克之さん(東京都)の3都県の生産者からお話を伺いました。

それぞれの生産者からどのようなことが語られたのか、会場の様子をお届けします。

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東京農村5周年ということもあり、会場に人が入り切らないのではないか!?と思うほどの大盛況。オープニングは東京農村オーナーである中村さんのご挨拶からスタートしました。

ケーススタディ講演で最初に登壇したのは苅部さん。今年、日本農業賞特別賞を受賞した生産者です。
冒頭、「都市農業の役割は生産だけでない地域貢献がある」と話し、横浜という街なか農業の特徴に触れ、ご自身が経営する直売所「FRESCO」設立とオリジナル野菜「苅部大根」「苅部ねぎ」「苅部人参」を開発の背景、そして神奈川県の農家グループ「神七」と農業塾・百姓塾の成り立ちを伺いました。

都市農業の役割を考えるキッカケは、ご子息の「農家は社会を下で支えている。父のような諦めない農家になりたい」という言葉からだったというエピソード、参加者の中には胸を打たれた方も多かったのではないでしょうか。「都市農業はどのようにして社会を支えていけるのか?」この問いかけで苅部さんの講演は終了しました。

続いて登壇したのは、鵜殿さんとJAとうかつ中央の佐々木さん。松戸市の地域や農業と特色に触れ、花卉や野菜の栽培から、なぜレモンに注目し柑橘の栽培を始めたのか、ドリンク販売を始めた背景や大学との連携で何を行っているのかなど、鵜殿さんと佐々木さんのお二人の掛け合い形式で発表が進みました。レモンの栽培を始めたキッカケとして、地域ではナシの生産が盛んですが、「ナシは甘くないといけないが、レモンはただ酸っぱければいいから」レモンに注目したとおっしゃり、会場を沸かせました。そして、「進む都市の農地減少。土地を確保しなければ日本の農業は厳しくなる」という鵜殿さんの問いかけで、ケーススタディ講演は終了しました。

パネルディスカッションでは、再び中村さん、苅部さん、鵜殿さんの3名が登壇し、エマリコくにたちの代表である菱沼勇介さんが司会進行を務め、登壇者へ◯✕質問形式で進行しました。話し合われた内容は「市場価格よりも高く販売できているか」「都市を守るための法制度は足りていると思うか」など、都市農業の現状が窺える鋭い質問の数々…

特に熱く話し合われたのは「都市農業はビジネスとして有利だと思うか」について。鵜殿さんの「都市農業は面積が足りていないため、農業だけでは成り立たないのではないか」という現状の厳しさを語る一方、中村さんは「東京の農業は補助制度が手厚いことや、消費地域が近いことから価格決定権が農家にあることの利点」を強調していました。

そして苅部さんの「今の時代は都市農業の重要性があまり認識されていないが、20年後には都市農業が必ず必要になる」という考えなど、都市と農業の現状や未来について話し合われました。

最後の質疑応答では、これまで登壇者の話を傾聴していた会場の参加者から様々な質問が挙がりました。各自がいろんな都市農業への思いを持って閉会し、お待ちかねの懇親会。東京野菜を活用した料理や鵜殿シトラスファームのレモンジャムなどが提供され、参加者それぞれの意見交換が行われ大いに盛り上がりました!
(東京産の飲み物の試飲も!「三鷹キウイワイン」、「八王子パッションフルーツジュース」、「神田どぶろくマドンナ」。)

東京農サロン・スペシャル全体を通して、地域特性や生産する作物、そして生産者の想いによって多様な農業のかたちがある、それが都市農業のおもしろさなのでありはないかと感じました。

 
Written by 菱山優佳里(エマリコくにたち・インターン)

最高金賞ミニトマトの秘密を聞く!【東京農サロン・ネオ開催レポート】

2023年5月17日、東京農村にて東京農サロン・ネオが開催されました!
今回は「全国ミニトマト選手権、最高金賞、金賞受賞「さわとまと」を産んだ府中市農業とは?」をテーマに、澤藤園・澤井政善さん、府中市役所・加藤泰幸さんをお招きしてお話を伺いました。
さわとまとの美味しさにも、澤井さんのマニアックさにもびっくり!?な会場の様子をお届けします。

まずは府中市役所・加藤さん(写真左)から府中市農業の今までとこれからについて、お話を伺いました。
現在、府中市農業の担い手は減少傾向…ですが直売所や地場野菜コーナーの出荷は増えていたり(直売所マップは市内で無料配布中とのこと!)
最近では少量多品目で栽培される方や、統合環境制御型のハウスの導入など新しい取り組みをされている方も増えてきているのだそうです!
そして、統合環境制御型のハウスは澤井さんも導入しているもの。
いよいよさわとまとの美味しさの秘密に迫ります。

そもそも、「全国ミニトマト選手権」とはどういうものかと言うと…
野菜ソムリエの方々が、全国のミニトマトの中から「もっともおいしいミニトマトを決める決定戦」!!
今回エントリーしたとまとは107品。
その中で澤井さんの「さわとまと」「さわとまと極」は最高金賞、金賞のダブル受賞となったのです!

(このダブル受賞する確率は、3/107×2/106×100で、たったの0.053%だと澤井さんはお話されていました!)


澤井さんからのお話は、受賞への大きな拍手とさわとまとの試食からスタートしました。
一口食べてその美味しさにみなさんびっくり!!(農家さんからはもう自分で作るの嫌になる、というお声も聞こえるほど…!)

園名の澤藤園に、他のトマトとの「差は糖」をかけて名付けられたさわとまと。その名の通り糖度にこだわって育てられています。
さわとまとの過去最高平均糖度はなんと15度!(これはメロンや柿に匹敵するそう…!)
糖度の高いとまとを育てるために、食事睡眠家事育児以外(!)は全てとまとに一点集中!したといいます。

さわとまとの糖度が高い理由の一部をご紹介すると、とまとは与える水分を減らすことで糖度が上がるそう。
例えば、通常200gになるはずのとまとに与える水分を減らして100gほどに育てると、糖度は約2倍になるのだとか!
ですが、ただ水分を減らせばいいというものではなく(減らしすぎると逆効果になってしまう)水は光合成をするのに必要で、光合成をすることで糖度も上がるためその加減が難しいとのこと。
収穫の度に糖度計測と試食を欠かさなかったといいます。
それ以外にも高糖度にするための研究は盛りだくさん!とまとの品種、収穫時期・方法、与える肥料の量やCO2濃度などなど…
その徹底した研究っぷりは、聞いているだけでも頭から火が出そうなものでした…!
(澤井さんの取り組みはホームページにも載っていますので、ぜひご覧ください!)
会場の参加者さんもびっくりするようなレベルの高いことを澤井さんはむしろ楽しんでいる(ように見える)姿が印象的でした。


澤井さんは次回の「全国ミニトマト選手権」での受賞も目指しているとのことで、「最高金賞、金賞、銀賞の食べ比べセットなんかも販売できたら」とおっしゃっていました(贈り物にもピッタリですね!)。

そして今後は、直売所や店舗だけでなくネットショップでの販売も準備中とのことなので、
みなさまぜひ、さわとまとのおいしさに感動してみてください(一度食べたら虜になるはず!)

 

Text by M.Kawamura (エマリコくにたちスタッフ)

霞ヶ関の熱風が吹き荒れた!【東京農サロン・ゼミ開催レポート】

 2023年4月27日(木)に東京農村にて「都市農地を守れ!霞ヶ関の熱風を感じる夜」と題して、東京農サロンゼミを開催しました。
 今回は国交相から酒井さん、農水省から新田さん、JA東京中央会から河合さんをお招きして、主に農業政策の観点からお話を伺いました。当日は定員15名のはずが、約30人もの方にご参加いただき、会場は文字通り熱気に包まれていました。

 まずは国土交通省都市局都市計画課課長補佐の酒井さんからお話いただき、生産緑地2022年問題を踏まえて、都市農地をいかに守っていくべきかについて理解を深めました。
 そもそも生産緑地2022年問題とは、生産緑地として指定されていた土地が、指定から30年が経過する2022年に指定解除を迎えて、地価が暴落する恐れがあるという問題です。この問題に対して、国交相は特定生産緑地制度を新設し、結果的に平成4年に定められた生産緑地の約9割が特定生産緑地に認定されたようです。ただ、指定の割合は地域ごとに若干のばらつきがあり(東京では9割程度の一方で、愛知では8割弱)、その原因については完全には解明されていないようです。特定生産緑地への指定が進んでいるとはいえ、1割の生産緑地は非特定であり、生産緑地が徐々に減少しているという傾向に変化はないことから、生産緑地・都市農地を守っていくことが引き続き求められます。
 そうした中で、国交相はさまざまな取り組みを行なっており、その一つが都市農地の創出です。これは現在駐車場などとして利用されている土地を農地に転換するというものです。農地への転換に際しての駐車場撤去費用などが高額のため支援したいものの、市民農園のように公共性が高いわけではないので、支援実行まで一筋縄ではいかないようです。
 上記のような農地の「量的拡大」以外にも、農地をいかに街の中で活用していくのかという観点で「質的」な改善に向けた取り組みも進んでおり、これは「田園エリマネ(エリアマネジメント)」と呼ばれます。収穫イベントや炊き出しなど、地域住民との関係性の中で農地を保全していく取り組みに対しての支援などが用意されているようです。
 また昨今では「まちづくりGX(Green Transformation)」という言葉も生まれており、これは温室効果ガスの排出削減のみを視野に入れるのではなく、生物多様性の確保や人々のウェルビーイングの実現も含めたまちづくりを目指す取り組みです。
 このように国交相では生産緑地2022年問題を乗り越え、農地を量的・質的の両方の観点で拡大していくような取り組みを行なっています。

 続いて農林水産省で半島・離島、中山間地域等の振興に携わる新田さんに、「農地への転換」を中心にお話を伺いました。酒井さんのお話でも話題に上がった生産緑地2022年問題に関して、現段階では9割が特定生産緑地に指定されているものの、今後別の用途に転用されてしまう可能性もあると指摘します。その上で、農業的な土地利用から都市的な土地利用に一度変更されてしまうと、農業的・自然的な土地利用に再度変更することは極めて困難であるとの指摘も多い中で、本当に農地に転換することは難しいのか?ということについてお話いただきました。
 農水省でも、今年度から農地を新たに作り出すための補助金を用意しています。
 実は昨今ではR不動産が神戸で実施した事例のように、農地への転換の動きが生まれてきており、特にシェア畑として転換する事例が多いようです。また、経済合理性の観点から分析すると、東京駅からの距離と市民農園の利用料金は、駅に近ければ近いほど料金が高いという関係性があり、現在のような状況では、駐車場やアパートとして土地を活用するよりも農地を開設する方が儲かるという状況が生まれているようです。このような農地への転換をさらに促進するためには、農政と都市政策が手を携えることが必要だと新田さんは指摘します。市民農園を接点として農政と都市政策がつながり、都市農地を保全することができるのではないかという提起でお話は締めくくられました。

  最後に登場したのはJA東京中央会 都市農業支援部の河合隼佑さん。農地把握システムの活用についてというテーマでお話を伺いました。
 農地把握システムとは、農家組合員が保有している農地情報を登録することで、地図上で情報を管理することができるというシステムで、農地シミュレーション機能を使えば、「◯年後に農家が〜才以上になる農地」といった検索もできるようです。これを利用することで、農家から聞き取った大切な情報を安全な形で保存するとともに、把握した農地情報を適切な相談対応や農地活用提案などの活かしていくことを目的としています。実際に現在JAにおいては、このシステムを活用して営農部門の職員が農家の相談に乗ったり、農業の担い手の支援をおこなったりしているようです。

  以上、今回は政策的観点から都市農地について3名の専門家からお話を伺いました。普段は実際に農業を営む農家ばかりに目が向きがちですが、そうした営農の取り組みが途絶えないように、そして今よりも活発になるように、あの手この手で支援をしているお三方のお話は大変新鮮で刺激的でした。

エマリコくにたち インターン生 岩崎友哉

武蔵小金井駅前に広がる畑の正体とは?!【東京農サロン・ゼミ開催レポート】

2023年3月20日(月)に東京農村にて東京農サロン・ゼミを開催しました。

今回は大久保農園園主の大久保勝盛さんをお招きして、「都市農地を市民に開く!わくわく都民農園小金井ができるまで」と題して、お話を伺いました。皆さんは「都民農園」をご存知ですか?貸し農園という言葉は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。今回はそんな都民農園についてレポートします!

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大久保さんは先述の通り大久保園の園主でありながら、JA東京むさし青壮年部の本部長も務めていらっしゃいます。植木職人のお父様から受け継いだ植木畑を収穫体験農園にリニューアルし、サツマイモやじゃがいもなどの収穫体験で年間2000人以上の園児を受け入れているそうです。


2022年3月には武蔵小金井駅近く(本当に近いです!)の3,000㎡の生産緑地を東京都に貸し、小金井市観光まちおこし協会による「わくわく都民農園小金井」を開設されました。わくわく農園は、東京都が都市農地の保全と超高齢社会に向けた高齢者の活躍と地域の多世代交流を進めることができる地域モデルの確立を目指して整備されました。敷地内には5種類もの農地があるのに加えて、防災機能や販売所も備えています。

メインとなるのはシニア農園で、ここでは都内在住のシニア層が栽培セミナーを受講することで野菜栽培技術を習得することができます。都市農業の縮小、高齢化の進行、地域の交流不足などが叫ばれる中で、土地貸借による農業体験を通して、農の学びと交流を生み出し、高齢でも元気に地域とつながることを可能にします。それ以外にも福祉農園、地域農園、こども農園など、目的に応じて様々な農地が用意されています。

農園開設当初は葉っぱや虫などに関して、ご近所からの苦情もあったようですが、地域住民の方との繋がりもできた現在では苦情はほぼ無くなっているようです。現在の課題は、都民農園利用者のその後のサポートに関するものです。都民農園では本来、そこで技術を習得したシニア層が、その後も農家を支援したり、土地を借りて農業を始めたり、地方に移住して農業を始めたりすることを想定しているようですが、小金井市ではそれらに関して支援制度が整備されていないので、今後取り組むべき課題と言えそうです。

以上、今回は「わくわく都民農園小金井」についてのお話を軸に、都民農園の難しさや可能性について理解を深めました。小金井市でも農地が減少している今なお大きな農地を持っている大久保さんが、貴重な土地で農業ができていることの利益を地域に還元すべく奮闘し、「保育園で収穫体験をした園児が大きくなって、『この場所でさつまいも掘り体験をしたんだ』と思い出してくれたら嬉しい」と語る姿が印象的でした。
https://koganei-kanko.jp/ (小金井市観光まちおこし協会HP)
https://koganei-kanko.jp/farm/introduction (わくわく都民農園小金井HP) 


ライター:一橋大学3年 岩崎友哉(株式会社エマリコくにたちインターン) 

東京のキノコ美味しい~!【農家と食べようin東京農村レポート】

2月25日土曜日、「農家と食べようin東京農村」シリーズの日野キノコ編が、「野菜と酒 Sprout」で開催されました。

「野菜と酒 Sprout」は、2月1日に東京農村に開業した新店です。
いろいろなキノコを育てている日野パイロットファームの遠藤善夫さんがキノコ栽培について語りました。
参加者はワインを飲みながら、美味しいキノコ料理に舌鼓。

奥が遠藤さん、手前でキノコを調理するのがSproutの大越昭彦シェフです。

ライヴ感満点です。
キノコは、なめこ、しいたけ、ひらたけ、そして珍しいところでタモギタケが用意されました。

しいたけは揚げたての串揚げで!
北海道や青森が原産だというタモギタケ。香りが素晴らしい。
なめこ。スーパーで売られているのとは、ぜんぜん見た目が違います。見た目のとおり、味が濃いです。

熱心に遠藤さんの話に耳を傾ける参加者のみなさん。
ひらたけは、シンプルなローストで。店じゅうに香ばしい香りが!

参加者からは、自宅でしいたけを育てる場合のコツなどの質問も出ていました。

「農家と食べようin東京農村」シリーズ、今後もお楽しみに!

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