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2025年3月19日開催
農家も知らない育種家の世界
東京の農業もすごい?!
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3月の「東京農サロン・ゼミ」は、昨年に『日本の果物はすごい』(中公新書)を出版された品種ナビゲーターの竹下大学さんをお招きして行いました。
竹下さんはキリンビールで育種に携わり、全米で大ヒットした花を誕生させた方。
様々な品種開発ストーリーを伝えるために『日本の品種はすごい』『野菜と果物 すごい品種図鑑』『日本の果物はすごい』などを出版されています。実は、東京農サロンの常連さんでもあります!
育種という仕事は、膨大な遺伝子情報、無限にある組み合わせ、そういうなかでコレと狙った品種を生み出していくという作業。
暗闇を進んでいくようなものでありながら、なかなか社会で評価されることが少ないです。
その実例として、アメリカの育種化ルーサー・バーバンクは、エジソン、フォードと並んで、19世紀の3大発明家と言われているが、エジソンとフォードは知っていてもバーバンクを知っている人はほとんどいないことを指摘していました。
※バーバンクが生み出したジャガイモは、今でもアメリカで一番作られていて、マクドナルドのポテトにもなっています。
さらには、品種開発する「サラリーマン育種家」の苦労といった裏話も聞かせていただきました。
東京の農業との関連においては、新宿御苑(旧内藤家敷地)が明治時代に育種のうえで大きな役割を果たしたことも語られました。ここの温室から国産メロンなどが生まれたということです。
竹下さんからは、江戸そして東京には、そうしたストーリーが眠っているということ。
そして、そうしたストーリーを活かすことで、東京の農産物のポテンシャルはひじょうに大きいということを語っていただきました。
というのも、競争の激しい野菜や果物の品種開発において、味わいはかなりの程度まで進化してきているとのこと。でも、おいしさとは、物質的な味わいだけでない。その農産物のもつ情報もまたおいしさの一部を構成するわけで、品種開発にまつわる汗と涙のストーリーは、これからの農産物販売では重要になるというお考えを披露いただきました。