東京農村ブログ

【2025年8月度:東京農サロン・ゼミ】株式会社エマリコくにたち代表の菱沼勇介登壇。「直売所の常識は、小売業の非常識(直売所経営学概論)」

東京農業のマニアックなテーマについて、夜な夜な語り合う「東京農サロン・ゼミ」
2025年8月の農サロンゼミでは、
東京農サロンの主催者の一人でもある、東京活性化ベンチャー・エマリコくにたち代表の菱沼勇介さんが、
「直売所の常識は、小売業の非常識(直売所経営学概論)」について語ってくださいました。

エマリコくにたちさんは、東京農業の活性化を目的に、
「しゅんかしゅんか」という地元野菜の直売所を国立・西国分寺・武蔵境に3店舗経営している会社です。

今回の講義の中で、特に印象に残ったのは「委託式」についてです。

委託式とは、農産物の販売を委託する仕組みのこと。
つまり直売所は「野菜を販売する場所」を貸すのが役割であり、
配送・陳列・値付けなどは基本的に各農家が行い、
販売金額の一部が「手数料」として直売所の収入になる仕組みとのことです。

この仕組みは、直売所経営において「在庫リスク」や「資金繰りリスク」が発生しないというメリットがあります。
一方で、価格戦略や売り場づくりといった通常の小売店では必須の取り組みが難しく、
他店との差別化や「付加価値」の付与が進みにくい。
結果として、インフレや賃金上昇など社会的変化に弱い業態を生み出している要因になっているとのことでした。
また、従業員にとっても制約が多く主体的にお店の経営に関わりづらく、改善が進みにくい構造となりやすいとのこと。
さらに「コンビニ弁当理論」(菱沼さんの造語)と呼ばれる、機会損失を拡大させていく視点もとても興味深く感じました。

「委託式」だけが直売所の制約条件ではないと思いますが、
「直売所の常識は小売業の非常識」を生み出す大きな要因の一つであることを強く実感しました。

では委託をやめて買取式にすれば直売所経営がどんどん良化していくのでしょうか?
もちろん決してそんな単純な話ではないと思います。

ただ私自身はいろいろな農産物に出会える直売所が大好きであり、今後も広がっていってほしいと願っています。
そのためにも、菱沼社長がおっしゃる「直売所のプロフェッショナル人材」について、
今後さらに学びを深めていきたいと思います。

エマリコくにたちインターン 小林みなみ

(東京農村7周年)アカデミアの発信。都市にも農業はあるべき!

6月の東京農サロンは、7周年記念のスペシャル回!!

通算78回目となる今回は、東京大学空間情報科学研究センター・准教授の新保奈穂美さん、千葉商科大学人間社会学部・准教授の小口広太さんをお招きし、アカデミアの視点から見た都市農業について熱いお話を伺いました。


1人目のゲストスピーカー 新保奈穂美さんは、以前『まちを変える都市型農園 コミュニティを育む空き地活用』を出版された際にも東京農村でお話しいただきました。今回も、国内外の事例を織り交ぜながら、都市を変革するツールとして発展してきた都市型農園の歴史や役割について伺いました。


都市の変革ツールとなる!? 都市農業の意義

都市型農園の歴史は遡ること19世紀ヨーロッパ。産業革命による都市の過密化で、感染症が蔓延する中、ドイツのシュレーバー博士が子どもたちの健康を促すため、緑の遊び場を作ったのが市民農園の発端と言われています。「クラインガルテン」と呼ばれる農地の貸借制度は、都市住民の小さな畑として親しまれています。また、2度の世界大戦中は食糧確保目的で都市型農地が各地域に広がりました。

日本においても、農業以外の土地活用を求めた農家と農に触れたい市民、双方のニーズによって、市民農園やコミュニティ農園などが徐々に広まってきました。特に最近はコロナ禍の貸農園ブームで、農を取り入れた暮らしが着目されてきています。

このような歴史からも分かるように都市型農園の機能は生産だけではありません。多世代にとっての居場所であり、防災・減災のための場所でもあり、環境教育、健康維持、資源循環など、、、幅広い価値を提供できる場所なのです。多様な意義がある一方で、関わる主体も農家、企業、市民、行政など多様化しています。そのため、イニシアティブをとっていく中間支援組織がないことが課題だと新保先生は指摘されていました。どのように都市型農園を活用し、よりよい都市空間を作っていくのか更なる議論を進めていかなくてはなりません。

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2人目のゲストスピーカー 小口広太さんは、日本農業経営大学校でも講師を務められた経験があり、鋭い視点で都市農業が抱える課題や今後の可能性についてお話しいただきました。


都市農業から生み出す!『畑を耕す市民』

近年浸透してきた「地産地消」という言葉。農産物と市民の物理的な距離は縮まってきましたが、農家と市民の人間的な距離は未だ離れたままだと小口さんは指摘します。さらに一歩先、農家と市民が協働する関係性を作っていくために小口さんが挙げていたのが「畑を耕す市民」です。現在は、市民農園や援農ボランティアなど様々な農業への関わり方が広がっています。とはいえ、経済的・時間的制約により、関わりたくても関われない人、もっと本格的に農業をやりたいのに余暇活動程度しか参加できない人など、ニーズのミスマッチは発生しています。そのため、農業との多様な接点を作り、階段状に様々な受け皿を準備していくことが必要となるのです。私たち市民自らが「畑を耕す市民」となり、農地をコモンズとしてみんなで守っていく関わり方が求められています。

 老若男女問わず多様な人々を受け入れる包容力が都市農業の特徴です。そこにあるというだけで非常に価値がある、特異な存在です。だからこそ、生産性のものさしで図るだけでなく、多面的なものさしをもって都市農業の価値を見ていくことが重要となっていきます。今後は都市農業が、日本の農村社会の課題を解決するモデルになっていくだろうと小口さんは仰っていました。


お二方の都市農業に対する熱い思いに触れ、その後の懇親会も大盛り上がり。これからの都市農業に想いを馳せながら、熱い夜を過ごすことができました!

 

竹下大学さん登場!農家も知らない育種家の世界【東京農サロン・ゼミ】

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2025年3月19日開催
農家も知らない育種家の世界
東京の農業もすごい?!
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3月の「東京農サロン・ゼミ」は、昨年に『日本の果物はすごい』(中公新書)を出版された品種ナビゲーターの竹下大学さんをお招きして行いました。

竹下さんはキリンビールで育種に携わり、全米で大ヒットした花を誕生させた方。
様々な品種開発ストーリーを伝えるために『日本の品種はすごい』『野菜と果物 すごい品種図鑑』『日本の果物はすごい』などを出版されています。実は、東京農サロンの常連さんでもあります!

育種という仕事は、膨大な遺伝子情報、無限にある組み合わせ、そういうなかでコレと狙った品種を生み出していくという作業。
暗闇を進んでいくようなものでありながら、なかなか社会で評価されることが少ないです。
その実例として、アメリカの育種化ルーサー・バーバンクは、エジソン、フォードと並んで、19世紀の3大発明家と言われているが、エジソンとフォードは知っていてもバーバンクを知っている人はほとんどいないことを指摘していました。

※バーバンクが生み出したジャガイモは、今でもアメリカで一番作られていて、マクドナルドのポテトにもなっています。

さらには、品種開発する「サラリーマン育種家」の苦労といった裏話も聞かせていただきました。

東京の農業との関連においては、新宿御苑(旧内藤家敷地)が明治時代に育種のうえで大きな役割を果たしたことも語られました。ここの温室から国産メロンなどが生まれたということです。

竹下さんからは、江戸そして東京には、そうしたストーリーが眠っているということ
そして、そうしたストーリーを活かすことで、東京の農産物のポテンシャルはひじょうに大きいということを語っていただきました。
というのも、競争の激しい野菜や果物の品種開発において、味わいはかなりの程度まで進化してきているとのこと。でも、おいしさとは、物質的な味わいだけでない。その農産物のもつ情報もまたおいしさの一部を構成するわけで、品種開発にまつわる汗と涙のストーリーは、これからの農産物販売では重要になるというお考えを披露いただきました。

 

東京農村6周年「東京農サロンSPECIAL」 気鋭の女性農業経営者が集合!

2024年6月19日水曜日、東京農村の6周年を記念した「東京農サロンSPECIAL」を開催しました。
東京農サロンは、東京農村開業以来、毎月行っている東京農業関係者の勉強会兼懇親会です。
この日、67回目を数えました。

今回は、東京農業をけん引する女性農業経営者3名の方に集まっていただき、ケーススタディ講演とパネルディスカッションを行いました。
登壇者は以下の方々。みなさん以前にも東京農サロンでお話いただいています。

梅村桂さん:(株)ネイバーズファーム代表取締役/日野市
生産緑地での新規就農全国第1号。早くも正社員を雇用した経営を実現。「ひのトマトフェス」などの地元イベントも成功に導く。

山内美香さん:山内ぶどう園/調布市
ブドウをはじめ多様な果樹を栽培し、体験事業・市民交流に力を入れる農業後継者。仙川駅徒歩10分と都心に近い。

鈴木茜さん:こびと農園代表/武蔵野市・小金井市
2022年、生産緑地で新規就農。団地を後背とする商店街に店舗も構える。体験農園の講師や農福連携など、多角的な取り組みを展開する。

小野淳さん(株式会社農天気代表取締役)がコーディネートしたパネルディスカッションでは、”農業は女性経営者比率が他の産業に比べて低い”という事実も示されました。

一方で、「女性だからといってデメリットがあるということは感じたことはない」という意見もありました。
私としては、体力については男性の方が勝っていることは否定できませんが、それを計算に入れた戦略がそれぞれの農業経営者にはあるのだということが分かりました。


懇親会では、「野菜と酒 Sprout」(当ビル1F)の東京産野菜を使った前菜に舌鼓を打ちつつ、こびと農園さんのズッキーニをその場で焼いてご提供しました。

また、澤乃井、多摩自慢、金婚、屋守といった都内の日本酒銘柄を揃えたほか、清瀬・関ファームのトマトジュース(濃いけどスムース!うまい!)も堪能しました。

東京農サロンは6年間継続してきましたが、じつは、まだまだ取り扱いたいテーマがたくさんあるのです。

そのくらい、東京農業の奥は深く、幅は広いのです。

今後も、知られざる東京農業を探索していきたいと思います。

ぜひお気軽に東京農サロンにお立ち寄りください。

 

((株)エマリコくにたち 代表取締役 菱沼勇介)


東京農サロンSPECIAL主催:一般社団法人MURA、株式会社エマリコくにたち、株式会社農天気、国分寺中村農園

特別協賛:株式会社ITS  協賛:株式会社シフラ

「トロるキッチン」とコラボ!旬のそら豆を味わいました【スナック東京農村】

5月11日土曜日、5Fのrootキッチンにて「スナック東京農村×トロるキッチン」を開催しました。

スナック東京農村は、農と食を基点としたつながり、そして地元赤坂の人たちとのつながりを広げるべく、今年2月から月に1度開催しています。

今回は旬の野菜を食べ、旬の話をトロ(吐露)する「トロるキッチン」とのコラボ企画。トロるキッチン・オーナーのちびゆりさんが親戚のそら豆を使った料理を振る舞いました。

そら豆を使った料理は全部で4品も!焼きそら豆、そら豆のポタージュ、そら豆とじゃがいもチーズ焼き、そら豆とベーコンのクリームパスタ。

当日は、農家さんや食関係の仕事をされている方、赤坂にお住まいのご家族など、12名の方にご参加いただきました。玉ねぎのお裾分けもいただき、みんなでちびゆりさんの料理を味わいながら、美味しいお酒を飲みながら、たくさん語らいました。

大好評につき、トロるキッチンとのコラボ企画を定期開催することになりました!

次回は6月29日(土)17時~20時頃、rootキッチンにて開催です。参加費は1,200円/人(お食事+1ドリンク付)。夏野菜を使ったおつまみ、TOKYO Xの生姜焼きなど3品程度を予定しています。
詳細はFacebookのイベントページ(スナック東京農村×トロるキッチン)をご覧ください。

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