みどりあふれるメトロポリス!農地が担う役割は? 【東京農サロン・ゼミ開催レポート】
偶数月の第3水曜日、夜な夜な開催される東京農サロン・ゼミ。
10/18(水)は『みどりあふれるメトロポリス!農地が担う役割は?~東京都の施策を語ろう~』というテーマのもと、都庁の都市整備局都市づくり政策部緑地景観課長の菅原淳子さんを講師としてお招きし、独自政策の成果や見通しについて伺いながら、東京都のみどりと農地の関係についてお話ししていただきました。
東京都の取り組み~農の風景育成地区とは~
東京都の「みどりの取組」では、大方針のひとつに、【将来にわたり農地を引き継ぐ】ことが掲げられています。
東京都には公園整備、開発で創出してきた緑、人々の生活に寄り添い受け継がれてきた里山、屋敷林などの様々な緑が身近にありますが、そのなかでも農地はまちがいなく重要なファクターです。国の動きとしては、生産緑地などの法制度で都市農地を守ろうとする動きもありますが、東京都にも独自政策があります。たとえば「農の風景育成地区」の指定が代表的で、一定の成果を残しています。
「農の風景育成地区」とは、減少しつつある農地をオープンスペースとして保全し、農のある風景を将来に引き継ぐ制度のことです。東京の農地は、食料生産だけでなく、潤いのある風景の形成や、災害時の避難空間など、多面的な役割を担っています。この制度では、農地や屋敷林などが比較的まとまって残る地区を指定し、散在する農地を一体の都市計画公園等として計画決定するなど都市計画制度を積極的に活用しています。地域のまちづくりと連携しながら農のある風景を保全、育成しているのです。
この取り組みは、後継者問題や年齢・身体上の理由などにより営農継続が厳しい農家にとっても非常に大切な政策であり、今後より活用されていくべきだと感じました。菅原さんは「農地の大小関係なく、今ある農地はすべて残していきたい」と語っておられました。ただ、農の風景育成地区指定後に農地を維持・管理していくためには、地主・近隣住民・農地を管理する人の協力が必要であり、管理・維持費がかかることも課題になることがあり、一筋縄ではなかなかいかないそうなんです。試行錯誤しながらも、なくなってしまう前に少しでも多くの農地を守っていきたいとお話ししていました。
繋ぐ役割~みどりを考えるきっかけづくり~
「今後、貴重な都市農地を保全していくためには様々な人々の理解が必要であり『農と都民を繋げること』が私たちの役割です。」と菅原さんは熱く語っておられました。
農や緑があることを当たり前だと思っている人や興味がない人に、いかに農の重要性を感じてもらえるか。都民に実際に農に触れてもらい、農が身近にあることを意識してもらう。今はまだ「街づくりとしての農地」と捉えている人は少なく、農家は農地を畑としか捉えておらず、街中の人は「畑があるな」くらいにしか感じていない。農家も都民も都市農地の希少性を他人事のように考えている人が多いのが現状です。今後、東京都として都民に農地や緑に触れてもらうきっかけをつくり、農と都民の懸け橋になる政策を行っていくそうです。
今回のお話しのなかで「守れる農地は大小関係なくすべて守りたい」というお言葉がとても印象に残っています。
減少しつつある都市農地を守るためには東京都や農家だけでなく、私たち都民も農を理解し協力する姿勢が大切です。あらめて私自身も他人事のように捉えず、緑ある風景を守っていきたいと感じました。これから先、東京都がみどり溢れる街になる未来も近いのではないでしょうか!
(エマリコくにたちインターン生 福田菜子)