2023年7月19日(水)に東京農村にて『多様性の立川農業「立川印」!』と題しまして、東京農業サロン・ネオを開催いたしました!
立川農業の特徴と2022年にできた「立川印」について知りたいと思います。
トライアスロン農家・中里さんのお話
今回、ご登壇頂いたのは、なかざと農園・中里邦彦さん、高橋園・高橋尚寛さんです。長年、立川市内で農業に従事し、新規就農希望者を積極的に受け入れてきたお二人から、立川農業の特徴や就農希望者へのアドバイスなどを伺いました!司会進行は農天気・小野淳さんです。
まずは、中里さんより立川農業となかざと農園についてお話いただきました。立川市内は市街化調整区域であり、野菜、果樹、畜産、花卉、植木などバラエティの富んだ農業が行われています。
また、2022年には立川農業振興会議が主体となり、生産者と共に立川農業全体をブランド化した「立川印」を作成しました!立川農業を見て、感じて、味わって欲しいという想いを込めて、ブランディングを行っているそうです。
続いて多品目の野菜を生産する、なかざと農園についてです。園主の中里さんは、立川市で代々農業を営む家の元に生まれました。大学を卒業後、多摩信用金庫に就職し、取引先である個人・法人のキャッシュ・フローの作成や事業計画書の作成、集客など、事業改善のお手伝いをされていたそうです。そのときの経験から農業を見た際、情報発信を行っていないことや、どんぶり勘定の事業体が多いことが問題点として挙げられるのではないか…と思うようになったとのことです。
そして、代々受け継いできた農地を途絶えさせてはいけないという思いから、39歳のときに多摩信用金庫を退職。東京都農林振興センターにて果樹を専攻して農業の基本を学び、自家継承して現在にいたります。なかざと農園さんでは野菜を多品目手掛け、小売店への出荷や対面販売、農業体験を行っています。
収納当初に感じていた農家自身の情報発信という課題について、中里さんは自身の農業での取り組みや思いをホームページの活用という形で発信しています。中里さんいわく、情報は自ら発信していくことで周りからも情報が集まってくるのだとか。今までなかった発想に繋がることもあるそうです。
中里さんは対面販売も行っています。お客さんの顔を見て直接販売することで地元のリピーターになるお客さんが得られることと、なによりお客さんの喜ぶ姿が見られることが対面販売の良さです。ただし、販売まですべて行うには手間も増えてしまうため、信頼できる仲卸さんに任せて販売することも選択肢としてあるといいですね。
そんな中里さんの新規就農希望者へのアドバイスは筋トレをすること!農業は強い精神が必要であり、精神は肉体を鍛えることで強くなれるのだとか。中里さんは現在、トライアスロンに挑戦しているそうです!
法人化!その社名は……!
続いて高橋さんよりご自身の経験や高橋農園についてお話を伺いました。
高橋農園さんの最大の特徴は立川で果樹を多品目栽培していること。また、作物は小売店や飲食店に出荷し、体験農園を行っています。先代は立川で植木の生産を行っていましたが、高橋さんは食べるものを作りたいという思いから果樹に切り替え、現在は12~14種類の果樹の栽培を始めました。
生産のこだわりは、着果管理や光合成を重視し、有機質肥料を用いて時間をかけて育てることで味に深みを出している、とのことです。
また、多品目を手掛けることで、常に提供できる作物があり、働き手の通年雇用を可能にしています。栽培品目は立川という立地を活かし、消費者に収穫してすぐのものを提供できるため、モモやイチジクなど鮮度が重要視される作物を選定しています。
多品目栽培するためには作業の効率化が不可欠。例えば、カキの樹高を低く育てることで脚立に乗る手間を省いています。カキの樹高が低いことで、農業体験に来た子供が収穫しやすくなり、効率化を考えた取り組みも思わぬ改善に繋がることもあるそうです。
さらに、高橋さんは新たに農地的確法人として「東京農業株式会社」を設立しました!
会社設立のキッカケは、従業員を安定して雇用していきたいという思いと、近年、新規就農希望者が増加していることが農業界にとってチャンスではないかと考えたからだそうです。会社名には東京の農業に貢献していきたいという想いが込められています。
中里さん、高橋さん、お二人とも多品目を手掛けていますが、その背景には通年雇用の創出や災害などによるリスク回避を考えてのことだとわかりました。また、立川という立地を活かした作物の選定や売り方をしていました。
お二人からお話を伺ったあと、質問タイムでは様々な質問があがりました。よく出てきた質問は新規就農者受け入れに関してのもの。中には、新規就農者を雇用すると将来のライバルになってしまうのではないか、という質問もありました。それに対して中里さんは、市場が広いため競合はしないと考えているそうです。高橋さんも、東京で果樹農家は少ないためライバルになりにくく、逆に仲間になり得るのではと考えているそうです。
会場の様子は参加者同士のお知り合いが多かったようです。モモの切り方レクチャーが行われると、キレイに剥けたときには参加者から「おお~」という歓声が!終始、和気あいあいとした雰囲気でした。
今回のまとめとして。中里さん、高橋さんのお二人は、常にお客さんの声に耳を方向け、需要を感じながら自分の農業をどうするか考え、進んできたことに強みがあるのではないかと感じました。そして、中里さんの農業には体力と精神力が重要だという話が印象的でした。私も筋トレ始めます!
ご登壇頂いた、なかざと農園・中里さん、高橋果樹園・高橋さん、そして現地、オンラインにてご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
次回は8月16日(水)、学校給食の地産地消についてのゼミを行います!
お楽しみに~!
Written by 菱山優佳里(エマリコくにたち・インターン)