東京農村ブログ

町全体で盛り上げる練馬農業[東京農サロン・ネオ開催レポート]

奇数月に開催している東京農サロン・ネオ。今回は1月19日に開催され、”都市農業のまち練馬 庭先直売所で稼ぐ!”をテーマに、さかい農園5代目園主でもあり、JA東京青壮年組織協議会の委員長を務めている酒井 雅博さんと、吉田農園8代目である吉田 智博さんにお話を伺い、東京都23区内では最大の農地面積を誇り、「世界都市農業サミット」の開催地となった練馬区の農業に注目しました。

販売だけではなく体験の場を提供
周りには畑がたくさんあり、実家にも畑のある環境で育った酒井さんは、その現実から逃れるために最初は農業とは全く関係のない会社に就職をしました。しかし農業が当たり前の環境離れてみて、改めて日本経済中心の東京都に属する練馬区にたくさんの畑があることの珍しさに魅力を感じるようになり、今では都市農業にどっぷり浸かっていると仰っていました。
酒井さんは約40aの農地を保有しており、トマトやブルーベリーの栽培を行っています。また、生産の場だけでなく、練馬大根の種まき、間引き、収穫作業の体験の場を地元の小学生に提供しています。
また、冬には練馬区の風物詩となっている「大根引っこ抜き大会」が開催され、そこで採れた大根は小中学校の給食「練馬大根スパゲッティ」として学内No. 1の人気を誇っているそうです。
このように酒井さんは生産の場だけではなく、人と人とのつながりを意識したレクリエーションにも力をいれ、地元の若い世代に農業の魅力を発信しています。

多品目・庭先販売の可能性
現在の穏やかな雰囲気からは想像できませんが、元々はイケイケの見た目で不動産販売会社に勤めていた吉田さん。
「作る人は100個でも買う人は1個」という祖母の言葉を大切にして、1つ1つ手を抜かず、食べておいしい、プレゼントで喜ばれる野菜作りを心がけて、吉田さんは多品目の野菜を生産しそのほとんどを庭先販売で完売させています。
また、コインロッカーと同じ仕組みでロッカーの中に野菜を入れ、無人で販売できる仕組みを取り入れているのも吉田農園の強みです。
また、以前、採れたとうもろこしをそのまま畑で販売したところ、家の前に行列ができたため、余った時間を使い子どもにとうもろこしの収穫体験をさせてあげたことをきっかけに、実際に収穫体験をしてもらい、そのままそのとうもろこしを販売するというとても面白いシステムも取り入れているそうです。
またロッカーに来たものの、小銭不足で野菜を買わずに帰ってしまう人がいることに目をつけた吉田さんは、両替機を設置し購買機会を逃さないようにしている点や、チョークアートを使ったおしゃれな外見の直売所にするなど、さらなる発展を目指しています。

このように、お二人ともただ自分の畑で野菜を収穫して販売しているのではなく、練馬区の人とのつながりを大切にして意欲的に練馬の都市農業の発展に貢献しています。2019年に行われた「ねりマルシェ」1万2000人という驚くべき数の来客数に恵まれ、大盛況だったそうです。
おそらく、酒井さんと吉田さんだけではなく、他の農家さんにもこのような意識を持った方が多くいることが、練馬農業の発展につながっているのではないかと思います。さらに練馬区は練馬区役所内に産業経済部・都市農業部というものが存在し、区全体で都市農業の振興をしているのも大きな強みなのではないかと思いました。

農家さん一人一人の横のつながりの意識が練馬の都市農業を発展させ、行政も惹きつけた練馬区の大きな”農業コミュニティ”があるということを今回の東京農サロン・ゼミを実感しました。
このような貴重な機会を提供させてもらい、都市農業に対して、さらに興味が大きくなりました。
ありがとうございました。

作成者 秋草 楠 (エマリコくにたち インターン)